技術情報
半導体(含むMEMS)ウェハにおける膜ストレスの原理と測定
1,なぜ膜応力(ストレス)を測定するのか。
- 新しいプロセスや、製造装置(CVD・PVD等)の性能確認。
- プロセスの品質や傾向管理。
- 診断とトラブルシューティング
- 膜材料や基板材料の研究開発
等々、半導体(MEMS)開発・製造工程におけるさまざまな段階で、膜応力の測定が必要とされる。
2,膜応力を発生させる原因は何か?
平坦なウェハ上に、薄い膜が形成されると、機械的応力(ストレス)が発生する。
このストレスを緩和するため、基板(ウェハ)は反りを発生させることになる。
そのメカニズムを下の図に示す。
3,ストレスによるウェハの反り
ウェハを基準に、伸長か圧縮かで2通りに分類される
4,膜応力によって引き起こされる問題とは
CTEの差により発生した応力が、成膜された膜強度を上回ると
- 膜のクラック(裂け)
- 膜の剥がれと歪み
- ボイド(膨らみ)
- 硬化した突起
等の不具合が発生する。
また、露光工程において、焦点のずれが起こり、歩留まりの低下に繋がる。
5,薄膜応力の測定
膜応力はストーニーの公式と呼ばれる以下の計算式により求められる
応力=ED2/6(1-v)tR
E=基板のヤング率(Young’s modulus)
v=基板のポアソン比(Poisson’s ratio)
D=基板の厚さ(Substrate thickness)
t=膜の厚さ(Film thickness)
R=曲率半径の変化(Radius curvature change)
応力測定に於いて、基本的に、E(基板ヤング率)、v(基板ポアソン比)、D(基板厚)、t(膜厚)の項目は、既知の値として扱う。
なぜなら、ヤング率とポアソン比は基板材料特性の問題であり、基板製造メーカーの責任範囲となるためであり、また基板厚と膜厚はそれぞれ専用の測定装置で測定すべき項目であるためだ。
従って、応力測定装置に求められることは、R(曲率半径の変化)正確に測定する能力である。
※上記ストーニーの公式は、膜厚に対して基板厚が十分に大きい時に、より正確である。
また、応力値の測定精度は、
- 装置精度(曲率半径の変化の測定精度)
- 基板厚と膜厚の設定値の精度
の2点に大きく左右される。
6,曲率半径の測定
曲率半径の測定方法に関しては、また別の機会にご紹介します。